女って生き物に逆らっちゃあ、この世の中生きていけない。
それは、俺がこれまでの人生で学んだことだ。
「あーかーやー・・・・・・?」
とは言え。寝起きなんかは、そんなことを意識してるわけなくて。
「んー・・・・・・。もうちょい寝かせろ・・・・・・。」
「赤也?誰に向かって口聞いてんの?」
「誰って・・・・・・。」
「あと、10数える間に起きなかったら・・・・・・そのまま一生眠り続けることになるけど、それでもいいかしら?」
「んー・・・・・・。」
「なるほど。今すぐ、でもいいわけだ。了解。んじゃ、いっくよー・・・・・・!」
“ドガッ!!!!”
「うおっ・・・・・・!!」
「あれ?起きた?眠らせるつもりだったんだけど。」
「テメェ、今、思いっ切り腹に・・・・・・!って、危ねぇ!!何、もう1発入れようとしてんだよ?!」
「今、私のこと何て呼んだ?」
「あぁ?!そんなこと・・・・・・!」
「テメェって言ったわよね?」
「・・・・・・悪かった。」
「わかればよろしい。それじゃ、さっさと学校に行く準備しなさいよ。」
「お、おう・・・・・・。」
俺を起こした奴が俺の部屋から出ると、もう1人の女の声がした。
「ありがとう、ちゃん!私が起こしても、なかなか起きないから、あの子。」
「いえいえ。私にできることなら何でもしますから。」
コイツらのせいだ・・・・・・。俺が女に逆らっちゃいけねぇ、なんて思うようになってしまったのは。
俺の部屋の前で声をかけたのが、俺の姉貴。生まれてから、ずっと一緒なんだから、コイツの影響はでかい。
そして、その姉貴が声をかけた相手、つまり俺を起こした奴は、俺の幼馴染である。・・・・・・こっちも、ある意味、ずっと一緒みたいなもんだからな。
こんな奴らに囲まれてちゃ、そりゃ女恐怖症にもなるっつーの!・・・・・・でも。俺は、そんな幼馴染に惚れてたりもする。自分でも謎だ・・・・・・!!
「――準備できた?」
「おう。」
「それじゃ、行こっか。」
着替えやらご飯やらを済ませ、家を出ようとしたところに、一旦家に戻っていたがまた迎えに来た。俺らは部活まで一緒で、こうやって毎朝一緒に行くことになってしまっている。
いや、そんな言い方したら、まず間違いなく怒られて、半殺しにされるから、ぜってぇー口には出さねぇけど。
「――おはよう、ジョン!」
「ワン!」
そして、は毎朝、近所のペットのジョンに挨拶する。
その行動自体も、だけど、何より俺には向けないような最高の笑顔で、ジョンに話しかけている辺り、可愛いよな、なんて思ってしまう。
「それじゃ、今日も学校に行ってくるねー。」
「ワン。」
「行こ、赤也。」
「・・・・・・じゃあな、ジョン。」
でも、俺に全く向けられない、ってわけじゃない。こうやってジョンに話しかけた後とか、時々、俺にも最高の笑顔を見せる。
・・・・・・これがギャップ、ってやつか?!普段があんな感じだから、余計に可愛く見える。・・・・・・マジで、ズリィぞ、ギャップとか。
ギャップと言えば。周りには、俺が起こされてたり、何かと世話を焼かれてたりするイメージがあるみてぇだけど、実際はそうでもない。そりゃ、それも事実ではあるけど、意外と放っておけないタイプなんだよな、って。・・・・・・いや、そう思ってんのは俺だけか?単に俺がのことを気になるだけ、かもしんねぇ。
・・・・・・くそう、どんだけ惚れてんだよ、俺。
「赤也?」
「ん?」
「何か考え事?」
「なんで?」
「ちょっとボーッとしてるように見えたから。ただ、まだ少し眠いな、ってだけ?」
「そうじゃねーの?別に、俺はいつもと変わんねぇし。」
「そっか。それなら良かった。」
・・・・・・あ、ヤバイ。今、俺のことで、が思い切り嬉しそうに笑った。
本当、ギャップとか、反則だ・・・・・・!!
いつか、絶対、逆転してやる!!
そう決意して迎えた、いつも通りの部活。
どうしたら、やり返せっかな〜。・・・・・・ってことばかりを考えていた。うん、考えすぎていた。
気づけば、俺は休憩時間まで考え込みすぎて、頭を使いすぎて・・・・・・眠っていたらしい。そして、休憩時間はとっくに終わっていたらしい。
ということに、今、目の前で怒るの言葉を聞いて、気づいた。
「――さ〜てと、覚悟はいいかしら、赤也?」
「ちょ、タンマ!悪気があったわけじゃねぇんだって!」
「まずは、目を瞑ろうか。そして、歯を食いしばって・・・・・・。」
「だーかーら!悪かったって!ずっと、のことばっか考えてたら、時間があっという間に経ってて・・・・・・!」
「・・・・・・え?」
「あっ・・・・・・!!」
「・・・・・・。」
やっべー!!焦りすぎて、俺、余計なこと言っちまったー!!!
も固まって・・・・・・。ん・・・・・・?
「?」
「な、なに・・・・・・?」
「・・・・・・なんか、顔、赤くね?」
「っ・・・・・・そんなことない。それより、私のこと考えてた、ってどういうこと?」
冷静に返しただけど、一瞬、動揺したように見えた。・・・・・・もしかして。
そう考えた俺は、いっそ正直に説明してやることにした。
「俺、いつもに振り回されてばっかだなーと思って。たまにはお前を振り回せたらなー、って考えてた。だって俺、のことが好きだから。」
「!!」
ビンゴ!
「、照れてるだろ?」
「なっ?!そ、そんなこと・・・・・・っ。」
「いや、でも、そういうところも俺は可愛いって思うぜ?」
「〜〜〜っ!」
おお!!マジで、いい反応!
「は?は?」
「う、うるさいっ!からかわないで!!」
「からかってねぇって。マジで、そう思ってんの。俺、ずっと幼馴染としてお前のそばにいるより、お前の彼氏として・・・・・・。」
「あー!!!もう止めてー!!!!!」
耳をふさぎ、ぎゅっと目を閉じた。その顔は真っ赤で、もう嘘をついたって無駄だ。
本当、さっき言ったように、そういうところも可愛いとは思うぜ?でもさ、いつまでも逃げてるわけにはいかねぇだろ?
俺はの両肩に手を置き、こっちに意識を向けさせた。
「いいから聞け。」
「・・・・・・。」
「俺はマジで好きなんだ。嘘でも冗談でもない。だから、お前の返事が聞きたい。」
「・・・・・・わ、私は・・・・・・。その・・・・・・好きじゃなかったら、ここまで赤也のこと、気にかけたりしない。」
「つまり?」
「・・・・・・わ、私も・・・・・・好き。」
「じゃあ、付き合ってくれんの?」
は恥ずかしそうに、こくりと頷くだけだった。・・・・・・お前、そんな可愛い反応もできんじゃねぇか!!
あらためての可愛さを実感して、好きで好きでたまらなくなる。だから・・・・・・、調子に乗りたくもなる。
「なぁ、。さっき、目を瞑れ、って言ってたよな?」
「・・・・・・そ、それが何よ。」
「それって、もしかして。キスしようとしてくれてたり?」
「ばっ・・・・・・!そんなわけないでしょ!!!」
そう言ったから与えられたのは、頬にキス・・・・・・ではなく、ビンタ。うん、調子に乗ったな、俺。
でも、殴られるんじゃなくて、ビンタだったところからして、やっぱりは俺のせいで調子が狂ってると見て、間違いない!
意外な弱点はっけ〜ん、っと。
だから、次の日は。
「赤也〜?さっさと起きないと、殺すわよー?」
なんて声が聞こえてきても。
「んー・・・・・・。がキスしてくれたら起きる・・・・・・。」
とだけ言って、俺は再び寝返りを打つ。・・・・・・が。
「・・・・・・なるほど。そういうことね。」
なぜか楽しげな声が聞こえた。・・・・・・と言うか。寝起きだったから、あんま聞いてなかったけど、この声って・・・・・・。
「あ、姉貴?!!!!!」
「あら、珍しい。アンタにしては、早くお目覚めね?」
「つ、つーか!なんで姉貴が?!」
「ちゃんが顔真っ赤にして、今日は無理なんです、って言ってきてくれたから。・・・・・・でも、アンタのさっきの返事でわかったわ。なるほど、昨日から二人は付き合・・・・・・。」
「あー!!もう、何も言うな!!ほら!もう俺は起きたんだから、さっさと出ろ!」
「はいはい。」
そう言いながら、姉貴はニヤニヤとして、部屋から出て行った。
・・・・・・くそう。やっぱり、女は苦手だ。
その後、俺を見かけてはニヤニヤする姉貴を完全無視して、そっこーで準備して家を出た・・・・・・ら。
「・・・・・・おはよ。」
「お、おう。」
少し俯きながら、いつも通り家の前で待つの姿が目に入った。
「二人とも、行ってらっしゃーい!」
「姉貴は黙ってろ!」
「い、行ってきます・・・・・・。」
姉貴に見送られ、・・・・・・って、お前も自分の準備しろよ。とか言ったら、殺されるから言わなかったけど。あと、マジで無視したかったし!!
とにかく、と無言のまま、しばらく歩いていた。
・・・・・・気まずすぎる。ジョンの所に行けば少しは・・・・・・って、そんなの待ってるなんて、男らしくねぇよな!
「。」
「な、なに?」
「ちゃんと今日も待っててくれたんだな。」
「あ・・・・・・当たり前じゃない!赤也が遅刻しないように、って先輩方から任されてるんだから。」
お。少しずつ、いつものに戻ってきたか。
「大体、先輩たちもひでぇよな!幼馴染だからって、に任せるなんて。」
「そもそも、赤也が自分の力で寝坊することなく朝練に行けるなら、私や先輩方が気にかける必要は無いんだけどね?」
「す、すいません・・・・・・。」
「わかればよろしい。・・・・・・あ。ジョン、おはよう。今日も行って来るね!」
いつの間にか、ジョンの所まで来て、そしてすっかりいつも通りになっている。
・・・・・・うん、やっぱりは、俺が助けてやんねぇとな!って、きっと、俺以外は納得できねぇことだろうけど。
ま、それでもいいんだけどさ。の弱ってるとこなんて、俺だけが知ってればいいし。・・・・・・でも、本人にもそう思われてるだろう、ってとこがちょっと、なぁー。
ってわけで、反撃。
「ジョン、これからは俺のカノジョだから。そこんとこ、ヨロシクな。」
「な・・・・・・っ!そ、そんなこと、いちいち言わなくてもいいでしょ?!」
「なんでだよ。いっつも喋ってる仲なんだし、それぐらい報告しとかねーと。・・・・・・あ、じゃあ、先輩たちにも・・・・・・。」
「あー、もう!黙れ!!」
そう言って、が俺の背中に平手打ちした。・・・・・・やっぱ、殴りはしねぇんだよな。
でも。今回は、ちょっと・・・・・・いや、結構痛かったぞ。これ、ぜってぇー跡残ってんじゃね・・・・・・?
うん、やっぱり、反撃もほどほどにしておこう。
誰の夢でも、結構振り回し&振り回され関係が好きなんですが、切原くんは特に好きなので、今回は最強ヒロインにしてみました!あと、お姉様にも逆らえないイメージがあるので(笑)。
でも、お姉様強気説は、メジャーな感じがします。皆様の中では、どんなお姉様像でしょうか?
あと、今回書きたかったのは、目を瞑る=殴るorキス?って部分ですね。・・・おっと。でも、メモでは「最恐“口塞いじゃうぞ”→逆転」というようなことを書いてました。・・・口塞ぐ、か。メモの方が過激ですね(笑)。まぁ、とにかく最強&最恐が書きたかった、ということです。
そのおかげで、ハチャメチャで明るい話が書けて楽しかったです♪・・・その分、胸キュン度は少ないかもですが;;すみません(苦笑)。
('12/07/11)